こうして読んだ本を記録していると、小説を読まなくなったなあと思います。実家から出る時や結婚、出産を経て自分の本棚を何度か整理していますが、手元に残っているのはエッセイや食べ物が美味しそうな本ばかりです。もちろん小説も好きなのですが、その世界にのめり込んで一気に読むという集中力も時間も無くなってきているのか…。
今回も読み返したい本には☆をつけています。
幼ものがたり(石井 桃子)
- 作者:石井 桃子
- 発売日: 2002/06/20
- メディア: 文庫
古稀を迎える頃に、幼い頃の家族や近所の人々との日々の記憶を辿った自伝的な回想記。小学校に上がる前のことをよくこんなに詳細に、と驚くほど。姉の物を欲しがる筆者を見た母親が「ちょっと渡せば小さいからすぐ忘れるよ」等と姉に言ったのを、いまだに覚えていてエピソードとして記しているのが面白かったです。明治の終わり頃の話なのに自分も追体験しているような感覚になりました。
戦争は女の顔をしていない(スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ) ☆
- 作者:スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ
- 発売日: 2016/02/17
- メディア: 文庫
第二次世界大戦での体験をソ連の従軍女性から聞き取りまとめたもの。公に記された英雄としてのエピソードではなく、意識的にまたは無意識に隠されてきた生々しい証言の数々。過酷な状況での戦友や家族の死の惨たらしさの中に、ささやかな日用品への喜びや、ふとした瞬間に感じる自然の美しさ、ひそやかな恋愛などが断片的に混じるのが余計にやりきれない。
幸田文台所帖(幸田 文)
◯◯帖シリーズの二作目。食べる人を思って手間をかけつつ、気取らない清々しい料理。なかなか自分では難しいけれど、たまにはちょっとでも台所にきちんと向き合おうという気持ちにさせてくれる本。随筆とともに収録されていた小説「台所のおと」がとてもよかったです。夫婦で営む料理屋にて、病に伏す夫のもとに聞こえてくる妻の料理の音。人の心情や性根が様々な音に出るというくだりが面白く、また怖い。
一汁一菜でよいという提案(土井 善晴)
- 作者:土井 善晴
- 発売日: 2016/10/07
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
一汁一菜をベースにハレはハレ、ケはケとしてできる範囲で旬なども意識した家庭料理を作りませんか、という本。レシピ本ではありませんがお米の炊き方やお味噌汁の作り方のヒントも。忙しい時にはお惣菜に頼ればいいし、ときにはおいしくなくてもいい。でもぞんざいにしていいというわけでもない。三度三度きちんと作らなきゃ!という人はちょっと気が楽に、零汁一菜をよくやる私はたまにはお味噌汁作りましょ、となります。古来からの美意識や感性について記した箇所は「台所帖」と通じるところがありました。
きみは赤ちゃん(川上 未映子)
初めての妊娠、出産から子どもが1歳になるまでのエッセイ。つわり、無痛分娩からの帝王切開、産後クライシスなどなど。私のときと比較して、分かる分かる!というところもあればそうでないところもありましたが、ハイになったり落ち込んだりわけがわからない様子が素直に書かれていて面白かったです。読んでいるうちに今の私の子どもの月齢を追い越して、初めての病気や保育園入園を乗り越えていくのでなんだかしんみりしてしまいました。早く大きくなって欲しいけど早く大きくなって欲しくない。